ひえんきゃく

「戦場において自分の有利な地形で戦うのは当然の事」

「ですので次はこのリングで戦いましょう」

「！？こ……このリングは！」

「確かにこのリングでは、わたくしが有利……でもいいのですの？」

「何のことですか？」

「わたくしの次の対戦相手は相羽さんですのよ」

「か・ん・け・い、ありません！」

「分かりました。では、行きましょう。わたくしのビクトリーロードへ！」

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「み、美月ちゃん！？どうして芝田さんのセコンドに……」

「どうしてもこうしてもありません」

「和希さん、あなたを倒すために私は芝田さんに付いた」

「ただ、それだけの事です」

「そ、そんな……」

「……美月が取っておいた焼き芋を和希が食べたから？」

「……食べ物の恨みは恐ろしい」

「な・な・な……何を言っているんですか」

「そ・そ・そ……そんな訳ある訳ありませんよ」

「……そう？」

「と、とにかく和希さん、覚悟してください。今回戦うのはこのリングですから！」

「……氷？」

「そうです。今回はこの氷上リングで戦ってもらいます」

「どうしますか？和希さん。なんなら逃げても構いませんよ」

「む逃げるなんてしないよ。堂々と戦ってみせるよ！」


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「氷のリング……これだけあったらかき氷、たくさん作れるだろうな」

「そして……それを売ったら……」

「ちょい待ち！氷を削りに行ったらあかんで」

「でも…･･･ちょっとぐらい……」

「あかん！」

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「うわっ、氷のリングって滑るなぁ」

「やはり慣れないリングで戸惑っているようですわね」

「では、行きますわよ」

「リング上のミキティと呼ばれたこの実力、とくと味わいなさい」

「そんなの初めて聞いたよ！」

「知らなかったのですか？私の屋敷ではそう呼ばれていたのですわよ」

「自分家かい！」

「……やれやれ（ふぅ）」

「何ですか、その目は！ええい、覚悟なさい！」

「必殺、斗離夫流亜苦世流！！」

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「むぅ、あの技はもしや……」

「知っているのか？柳生」

「はい、聞いた事があります」

「あれはまさしく裂光銀盤拳、氷上の魔拳と恐れられた伝説の拳です」

「中でもあの斗離夫流亜苦世流（トリプルアクセル）は亜鎖陀魔王が淤凛葡繻で魅せた技」

「それをああも使いこなすとは……芝田美紀、あなどれません」

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「ここは一気に攻めてください！」

「もちろん、そのつもりですわ」

斗離夫流亜苦世流を受け、ダウンした相羽にのしかかる芝田。

「この技を受けて見なさい！機矢滅留・苦落血！！（キャメル・クラッチ）」

「く、苦しい……」

（けど、それ以上に氷でお腹が冷えて……ヤバイよ……）

「そこです！力を振り絞って！」

「分かっていますわ」

（！？美月ちゃん……ボクにアドバイスを！？）

（ようし、負けるもんか！）

力を振り絞って抵抗する相羽。

そして当然抵抗を強めた相羽に戸惑う芝田。

「どうしたのですか！あなたの力はそんな物なのですか！」

杉浦から芝田に激が飛ぶが、それを相羽は自分に対するものと受け取り、更に力を込める。

そして氷上リングという舞台からか、手がかじかんだ芝田の手が相羽から離れてしまう。

「あっ！」

力を振り絞っていた二人はその勢いで、相羽は顔面を、芝田は後頭部を氷のリングに

打ち付けてしまう。

「何という屈辱！もう許しませんわ」

「受けなさい！慧亜保津経！！（エアホッケー）」

芝田の蹴りを受け、氷のリングを滑っていく相羽。

「勝ちましたわ」

「これで次回からはわたくしがＣＢＴの新メンバーとして参戦ですわ」

しかしリングにはロープがある訳で……。

ロープの反動で返って来る相羽に気付かずに想像にふける芝田。

「前を見てください！」

杉浦の声に顔を上げる芝田と相羽。

「なっ！？」

「美月ちゃん、ありがとう！」

「スターライト・ハリケーンミサイル！」

「あーれー」

相羽のタックルを受け、場外へ吹き飛ぶ芝田。

カウントが始まるが起き上がってこない。

そして２０カウントが過ぎ、相羽の勝利が確定する。

「やったー、勝てたよ。これも美月ちゃんのアドバイスのお陰だよ」

「え？」

「ありがとう美月ちゃん。焼き芋の恨みなんてなかったんだね」

「……当然です。私はそんなに器が小さくありませんから」

「……勘違いによる結果オーライ」

「今日の晩御飯はボクが奢るよ。何がいい？」

「いえ、ありがたいのですが、今日は遠慮しておきます」

「今日の私は芝田さんのセコンドですから、彼女についています」

「そっか、それじゃ、また今度ね」

「はい。その時はよろしくお願いします」

そして、芝田の元に向かう杉浦。

「芝田さん、大丈夫ですか？」

「わたくしが負けるなんて……」

「すみません、私のせいです」

「お詫びと言っては何ですが、ラーメンでも食べに行きませんか？」

「ラーメン？」

「はい。美来斗利偉拉麵亭のブロッケンラーメンというのが評判らしいですので、それを」

「まあ、たまには庶民の味を味わってみるのもいいかもしれませんわね」

「では、行きましょうか」

「ええ、次はまけませんわ」

「その意気です」

ブロッケンラーメンを食べに行った二人の運命やいかに？

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